糖尿病について
いつも当院のHPをご覧になっていただき、誠にありがとうございます。今回は糖尿病に関するコラムを書かせて頂きます。
糖尿病という名前を聞いたことがない方はほとんどいないと思います。しかし、どういう病気なのか、どういう症状が出るとか、将来的になにが起こるかをご存じない方も多いと思います。循環器専門医という立場で解説をさせて頂きます。
治療方法の変化
私が研修医になった頃はまだ、厳格な血糖コントロールと言えばインスリン治療(1日に3-4回自己注射)という治療が日常的に行われておりました。インスリンが絶対的に必要な1型糖尿病の方や膵臓の手術を受けられた方、妊娠糖尿病の方、食事摂取量が不安定な方、手術の前後の方などではインスリン注射を行うことは今でも一般的な治療として行われておりますが、これらの管理は入院中に主に糖尿病の専門の先生によって投与量の調整が必要となることが多く、私のような循環器内科医が管理することはほとんどありませんでした。しかし、インスリン分泌が保たれており、飲み薬だけで治療可能な方やGLP-1受容体作動薬・SGLT2阻害薬での治療が可能な方であれば、低血糖発作なども少ないため、勤務医時代からこれまで数多くの方を診療してまいりました。比較的、安定されている方であれば糖尿病専門医でなくても、安全に管理目標値の範囲内での管理も可能となる患者様がほとんどです。むしろ、SGLT2阻害薬に関しては心不全管理や腎保護といった効果も認められた薬剤もあるため、循環器内科医や腎臓内科医でも日常的に使用される薬剤となっております。
もちろん、当院でもインスリン治療を行っている方、1型糖尿病の方もおられますので安心して受診してください。
リブレ®という持続血糖測定器を用いて管理されている方もおられます。二の腕に機器を装着して24時間管理が可能となり、Bluetooth®でスマートフォンとの連動も可能となっており、慣れてしまえばご高齢の方でも使用可能ですし、使用方法については当院でご説明させて頂きます。一度、装着すると2週間使用いただけますので、通院頻度に合わせてお渡しさせていただきます。インスリン使用中の方であれば、保険適応となります。
治療の目的
糖尿病は「放置すれば怖い病気」ですが、正しい知識と治療で、糖尿病のない人と変わらない人生を送ることも十分に可能です。糖尿病治療の目的は「合併症を防ぐ」ことにあります。糖尿病の最大の問題は、高血糖そのものではなく、長期間続く高血糖が血管を傷つけ、全身に合併症を引き起こすことです。糖尿病という名称が変更になるという議論がありますが、『血管径の小さな血管から徐々に痛んでいく病気』なのです。
神経障害、腎障害、眼障害の順に起こると言われておりますが、全ての方に当てはまるわけではありません。末梢の細い血管から狭窄や閉塞などが起こりますが、血管の障害で症状が出たときには既に大血管と呼ばれる脳動脈、頸動脈、冠動脈、下肢動脈などに狭窄や閉塞が起こっている可能性があります。糖尿病と診断されているのであれば、最低でも年に1回は眼科受診、心電図、ABI検査(血圧脈波検査)、歯科受診を受けることを推奨しております。
健康診断でHbA1cの基準値を超えていると指摘されて受診に来られる方もおられますが、健康診断の項目にHbA1cが含まれていない場合もあります。一度、ご自身の健康診断の項目を確認するようにしてください。血糖値や尿検査の中に尿糖の項目はあると思いますが、一回の検査だけでは診断がつかないこともありますので、HbA1c検査や複数回の血糖値の確認等が必要となります。健康診断の結果、医療機関の受診を指示された方や、喉が渇く、尿の回数が増えた、体重の変動があったという方はまずは当院にご相談ください。
治療の最終目標
「血糖値・血圧・中性脂肪・悪玉コレステロール(LDL)・体重をコントロールし、糖尿病の合併症(網膜症、腎症、神経障害、脳梗塞、心筋梗塞)を発症・進展させないこと」が、最終目標となります。決して「血糖値やHbA1cという数値を下げることだけ」が目的ではありません。循環器専門医として糖尿病患者様の狭心症や心筋梗塞の治療にあたる際に心がけていたのは、「血糖値を下げるということに執着する」のではなく、「食後の血糖値を上げないようにすること」の重要性を認識していただくことでした。
一旦、糖尿病を発症してしまうと心臓や腎臓などの臓器を守るような薬剤を使用する必要が高まります。
従来からの薬剤
ビグアナイド薬
(メトホルミン®、メトグルコ®)
DPPⅣ阻害薬
(トラゼンタ®、ジャヌビア®など)
スルホニルウレア系薬剤
(アマリール®など)
↓(併用または変更することがあります)
心保護、腎保護のエビデンスのある薬剤
GLP-1受容体作動薬
(マンジャロ®、リベルサス®、オゼンピック®、トルリシティ®など)
SGLT2阻害薬
(ジャディアンス®、フォシーガ®など)
血糖低下作用に加え、腎臓や心臓を保護し、体重減少効果が期待できる薬への変更を積極的に行いますが、まずは低血糖リスクの低いものへ変更することを第一に心がけています。また、これらの薬剤は体重減少効果について注目が集まっていますが、当院でも糖尿病の診断基準を満たしている方には最初から注射製剤をおすすめするのではなく、患者様の併存疾患(心疾患、脳血管障害、慢性腎臓病など)によって最適な組み合わせで薬剤・治療法をご提案させていただきます。
降圧剤、脂質低下薬なども同時に処方する可能性もありますが、全てに意図をもって、一人一人に薬剤を選択させていただきます。
治療の基本
最初から注射をお勧めすることはありません。まずは食生活の見直し、運動習慣の確認からお話を伺わせていただきます。可能な範囲で構わないので、生活習慣を改めるところから、開始する必要があります。
ベジファースト: 野菜、海藻、きのこ類などの食物繊維を先に食べることで、食後の血糖値上昇を緩やかにできます。
甘い飲み物を控える: ジュース、加糖コーヒーは、液体で急速に吸収されるため血糖値を急上昇させます。スポーツドリンクや微糖と書かれたコーヒー飲料でも注意が必要です。
「歩く」ことを習慣に: 有酸素運動はインスリンの働きを改善します。食後1時間〜2時間後にウォーキングをするのが効果的です。
検査について
健康診断・35歳からのチェック
2型糖尿病は若年化が進んでおり、35歳から定期的なチェックが推奨されています。まずは健康診断の項目にHbA1cなどが含まれているかどうかを確認してください。糖尿病特有の症状が出てしまってからでは病気自体はかなり進行している可能性があります。働き盛りの方ほど「まだ大丈夫」と治療を放置しがちですが、現状を把握することが長く、健康に働くために必要な条件だと考えております。
多忙な方でも、当院では5分程でHbA1cの数値を確認することが出来ますので、いつでもご相談ください。
最後に
食事制限、運動療法だけで数値が良くなる方も実際にはおられます。生活習慣の見直し、朝食をしっかり摂取することから始め、バランスのいい食事を継続的に摂取出来れば、初期の糖尿病であれば薬を使わなくても治療は可能です。
しかし、病気でお悩みの方は糖尿病でも肥満症でも高血圧でも皆さん、それぞれの事情があり、長く持続させることが難しいのが実情だと思います。一人一人のライフスタイルや家庭環境、労働環境などの背景に寄り添うような治療方法をご提案させていただきます。
文責
よこいクリニック 院長 横井 満 (循環器専門医)



